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Yuccaさんとブーツ

まず、レユッカスについて。最初に出会ったのは2015年頃、パリのファッションウィーク中でした。信頼しているセールスの方から凄いブランドがあると紹介されたのがきっかけで見させてもらったのですが、そこには爬虫類のコンビネーションやマッケイ製法の厚底スニーカーなどが並んでいて。革靴が好きでイギリスやアメリカの老舗の紳士靴を多数所有していた当時の自分にはなかなか斬新なコレクションでした。最初はそのデザインばかりに目がいってしまうわけですが、実際触って細部を見ると作りは本物。そのショールームにいた話好きな女性に聞くと、私がデザイン設計して、作りはボナフェの職人がハンドメイドで仕上げるのだと言う。数分その方と会話しただけで「この人すごい。突き抜けてる。」と理解しました。後で知ったのですが誰もが聞いたことあるブランドの靴や、過去にはアスリートの靴も手がけていた靴業界のスペシャリスト。本人の所有している物や着こなしそのものもセンスの塊のような人で、異性でも憧れの対象となる。そんな素敵な女性でした。そして翌シーズンには3型発注して、初めて自分で買ったのがギリーシューズでした。フィッティングが快適でそこから1足ずつ買い足していって、気づいた頃にはそれまで履いていた錚々たる革靴達の出番が無くなっていました。革靴に対する考え方を丸っ切り変えられてしまったのです。自分の場合、服に対して過度なデザイン性を求めないので、靴が丸い(角が無い)と物足りなくなる。ユカさんの靴は一見ベーシックなデザインのものであってもラスト、トゥライン、素材、ディテールの組み合わせで何処か尖ってて色気があるんです。男の定番服である軍パンや太いデニムに合わせても野暮さを帳消しにしてくれる。それまでにオーセンティックなブランドを経由してきたからこそ、その明らかな見え方の違いがわかる。もうレユッカス無しでは自分のファッションにならない、バランスが取れなくなっていました。ここ数年そんな付き合い方をしながら、kakinohaをスタートして初めて作ってもらったのがこの靴。ボトムはクッションレングスが気分になってくると、短靴も良いけどブーツが履きたい。昔履いてたような質実剛健のワークブーツではなく、紐なしのシャープなブーツ。昨年パリで新作として置かれていたこのウエスタンを見た瞬間に、これだと思ったのです。さらに、ここをこうしたらもっと自分の服に合わせやすい、自分の満点を作ろうと。日本に帰って数ヶ月経って、ユカさんとあーだこーだLINEや電話でやりとりして届いたのが今作。満点の出来です。