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未完成的道中テーラード

 

久々にパッキン開封時に少し緊張した日。ensou.の粋なジャケットに高揚しています。周知の通りでテーラーの作るジャケットと言うものは、カジュアル服のように布と糸で出来るものでなく、裏地、毛芯、パット、カラークロスなど多種の副資材にミシン、手刺し、アイロンなどを駆使して体を立体的に包むように構築します。基礎や骨組みがしっかり整って完成する建築的なものです。そして今回のジャケット、SAL2。見た目からもなんじゃこりゃ感あると思いますが、とあるコンセプトがあって作られています。過去にSALジャケットという初代があって、それのマーク2。SARTORIAを文字った商品名だろうと思い込んでいたら、サル・パラダイスからだと。この辺明るくないので全く知らなかったんですが、1950年代の小説“On the Road”でアメリカ大陸を放浪する主人公の名前とのこと。後々のヒッピーに影響を与える小説なんだとか。

 

 

 

 

 

「終着地が目的でなく、“道中”に目的があるというかそんな話なんですが、SAL2もジャケットを完成させるまでの“道中”にスポットを当てました。ビスポークテーラーの定説とはだいぶズレた邪道なやり方も入れ込んでいて、特殊ミシンを使って新しい方法で毛芯の入ったジャケットを作ったんです。デザイン画では表現できない制作工程途中の遊びだったり、ある部分は縫製せずに完成させないままだったりと、そんなものがコンセプトになっています」西川さん談

 

 

 

 

 

 

アトリエで裏から見せてくれて、気分にぴったりだったので使わせてもらったイングランド生地。おそらく過去のensou.で使ったことがある生地の残反ですが、白、ベージュ、緑みがかったダークグレーの3本のリネン糸で出来ています。遠目ではグレー系のベージュ、寄りで見るとリネン特有の不均一感があって所々でネップが顔出していて可愛いです。そして胸から腰にかけて生地の上から白ステッチのハ刺しに気づくと思います。芯地と生地を繋ぐ特殊ミシンでのハ刺しを内部ではなく、外側からデザインとして取り入れる掟破り。ここがensou.です。好きですね。ハ刺しは次第にほつれていくと思いますが、製品としては問題なしです。

 

 

 

 

 

 

シルエットに関しては気持ち緩めで肩はしっかり乗ってきます。それでも昨今の緩い肩落ちのジャケットが当たり前になった方にはジャストだなーと感じるかと思います。西川さんの作るジャケットの肩と背中の包み方が好みで、自分の肩形状や傾斜とも相性良いので、Mでも着れてしまいますが、バランスから選んだのはLです。白のペインターとか、USネイビーのデニム、フランスのファイヤーマンとかのラフパンツにローファーで合わせようと思います。着込んだデニムシャツとか、古着のTシャツでさらに着崩すのも良さそう。寒ければカシミヤカーデをストール替わりに。そしてこの生地は早い段階でシワがくっきりとついてきて、とことんこなれていきます。やれてきたらようやくドレトラ、ダサい薄めのスニーカーで。自宅にハンギングされた佇まいだけで高揚してしまいそうですが、この素材は着込んだ方がかっこいいはずです。これは楽しみ。今週は2.19(土)だけの営業になります。2月ほとんど開けられず近隣の方、すみません。在庫残りましたら、日曜正午に商品帖更新します。あと、柿乃葉編集のエクスクルーシブ割合が増えてきたこともあって、ブランド名の「for kakinoha」表記は止めることにしました。

 

 

 

 

22.2.19- Sat

Ex SAL 2
Linen100 ( Made in England )
Sand Beige
M / L
143.000 tax in ( 130.000 )
ensou.