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SHIRAHAMAとレーヨンリネンシャーク

 

 

 

 

 

 

今季、絶対に掘り下げたかったトラウザーがある。SHIRAHAMAがお披露目になった。このトラウザーはとあるパタンナーと松村さんの仕事から生まれた。メゾンなのか、ビンテージなのか、レディス服なのか、はたまた祖父からの形見なのか、パタンナー自身がこれまで触れてきた様々なアーカイブと経験が、型紙に活かされるものだ。フレアが定着し始め、自らも提案してきた松村さんは、25SSに向けてさらに良い物をと、新しい価値を持ったフレアパンツ作りに着手していた。適度なゆるさを持ったカジュアルなフレアを、昔のバッチバチに作り込まれた英国ビスポークトラウザーのディテールを備え表現してみたいと。依頼したパタンナーが絶対履いてこなかったようなこのアーカイブをベースにすることで、新たな創造と価値が生まれると考えた松村さんの話を聞くと、かなりのSッ気を感じてしまう。聞くところによるとこのパタンナーは、最近伊豆方面に移住したようで、打ち合わせの度に都内のMAATEEのアトリエにやって来るようだ。行楽シーズンに3時間かけて白浜に行くことはあっても、6時間かけて白浜から東京を往復する人はなかなかいない。その仕事の仕方のインパクトに、新しいフレアのインパクトを掛け合わせて、SHIRAHAMAが誕生した。深めの股上に適度な緩さ、1cmほどの広がりを持った美しいフレア。そこに、異常なまでの作り込みが潜んでいる。一方で僕が今季、最も気に入った夏素材がレーヨンリネンのシャークスキンだった。その名の通り、サメのようにザラザラとした手触りを持ったシャンブレーの綾織り。強撚させながらも落ち感を備えたレーヨンと、ハリを持ったぷりぷりのリネンと言った相反する特徴を組み合わせた、MAATEEらしいユニークで他には無い生地である。何にでも合わせられるグレーベースながら奥行きのあるレーヨンリネンのシャーク、そこに入る赤のペーン。いかにもインポート的だ。イタリアの異端的生地屋が作りそうなセンスの良さに、松村さん自信作のSHIRAHAMAをぶつけてみたくなった。

 

 

 

 

 

 


シャリ味、汗をかいてもベタつかないドライな質感、風もしっかり通してくれる真夏にも最適な生地。そして色は“グレーに2色の赤のペーン”に見えるが、生地をよく観察すると階段になったシャークスキンの綾組織、タテは強撚レーヨン(チャコール&白)、ヨコはリネン(生成り&グレー)、赤のペーンは目の錯覚で2色に見えているだけで、色の配列によるものだ。松村さんの複雑な仕掛けによって、生地好きには堪らない世界が広がっている。

 

 

 

 

 


神は細部に宿る。フレアのシルエットの方に注目が行きがちだが、SHIRAHAMAの面白さはその変態的な作りにある。古いイギリスのビスポークトラウザースのディテールを再現したモデルであり、深く切り替えのあるマーベルトにはタックが取られ、腰回りの安定感と動きやすさのどちらもが備わる。複雑なベルトループの流し込みに、ポケット入口にはわざわざAMFステッチ。やはり手縫い部分も多いトラウザーであり、見えない内側だけでなく、外から見えるフロントの2タック上部も丁寧にグリカンでかがってある。高い工賃を払ってでも強行した松村さんの細部への拘り、それが“ビスポークフレア”のSHIRAHAMAである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕はスタイリングする上で、全体の色と”拾い”を重要視する癖があるが、この生地は手持ちの赤やオレンジといった強い服達を最大限に活かし、馴染ませてくれる。拾わなくても、グレーベースのチェックという何にでも合わせやすい本来の長所も持っているし、デニムシャツに合わせても、シンプルにグレートーンや黒で馴染ませたとしても、明らかな違いが出てくるだろう。我に返ると、グレートラウザーを何本持っているんだと自問自答してしまうが、このパンツはまた別ものである。サイズは1で胴囲80、股上33、股下73、総丈101.5、ワタリ35、膝幅25、裾幅26。2で胴囲83、股上33.5、股下76、総丈105、ワタリ36、膝幅25.5、裾幅26.5。3で胴囲87、股上34、股下78.5、総丈108、ワタリ37、膝幅26、裾幅27です。僕(177/67)で2を着用。寸法的には適度にリラックス感あるフレアと思わせるサイズですが、実際履いてみるとスッキリとした綺麗なパターン。仕上げ後のセンタープレスが馴染み始めると、次第に横に広がり出し、緩さが出てきます。取り扱いはドライクリーニング表記。洗ってしまうとレーヨンが縮むのでタテ方向に4、5cm短くなります。強燃レーヨンながら、水を通すことでいくらかコシが抜けて柔らかさが出るが、あえてこのビスポークフレアをカジュアルに履くのもカッコよさそうです。ビーサンに合わせたりして。そこにノープレスでも、緩くプレスしてあげても良い。10cm強の折り返し幅があるシングル始末なので、縮んで短くなったとしても、裾を出せば良いわけです。この辺の顔作りはお好みで。自分仕様のSHIRAHAMAに育ててもらえると嬉しいです。予定納期より随分と遅くなりましたが、履くにはここからがベストなシーズンですね。金土の店頭発売、在庫が残りましたら日曜正午に商品帖へ移します。

 

 

 

 

25.5.2 Fri – 5.3 Sat  / 12:00 – 17:00 @柿乃葉
25.5.4 Sun  / 12:00 – @柿乃葉商品帖

Ex SHIRAHAMA
Shell _ Rayon57 Linen43
Lining _ Polyester
1 / 2 / 3
63.800 tax in ( 58.000 )
MAATEE&SONS