2026.04.15
晩春のULKA

昨秋、お披露目となったニュートラウザー“ULKA – ウルカ”。松村さんと試行錯誤を繰り返し、ひとつの理想形として辿り着いたこのモデルは、一見すると端正なワイドストレートだ。しかし、その内側には緻密に計算された“違和感”が潜んでいる。最大の特徴は、膝位置を僅かに絞り、そこから裾へ向かって絶妙な分量で逃がしていく設計にある。 通常、ワイドパンツはストンと真っ直ぐ落ちるか、あるいは全体にボリュームを持たせるかの二択になりがちだ。しかし、ULKAはそのどちらでもない。膝から下にかすかな“フレアのエッセンス”を注入することで、足を通した際、正面からはストレートに見え、横から見れば溜まりすぎない美しい落ち感が生まれる。昨秋の第1作で僕らが体感したのは、このパターンがもたらす「重力の制御」だった。生地が足の甲に触れる瞬間の崩れ方、歩くたびに背後へ流れる裾の残像。MAATEEのパターニングの妙と、僕らが求める「品格のあるリラックス」が合致した瞬間だったように思う。半年が経ち、今この完成されたうつわに、ULKA初の春夏に向けて、新しい素材を落とし込む。勿論、パターンの変更は無し。目に見える情報と手が感じる真実が逆転するような、素材による脳裏に残る違和感の提案をする。

まずは、ヴィンテージのリネントラウザーズを彷彿とさせる、乾いた質感のベージュだ。この色を松村さんは「小金=Kogane」と名付けた。引きで見ると完全に無地だが、寄ってみると 生成りからベージュへと繋がる豊かなグラデーションの中に、光を受けて白い節が格子状に浮き上がっている。この野性味のある表情は、あえて太いスラブ糸を織り込むことで作られた。だが、Koganeに足を通した瞬間に走る違和感は、視覚情報とは別のものだ。 これはリネン100ではない、ウール100なのだ。この驚きを支えているのは、信頼を置くハタヤの職人による、執念のような縮絨工程にある。効率を度外視し、何度も何度も丁寧に縮絨する。その繰り返しとカシミヤライクな仕上げが、生地の中にたっぷりと空気を含ませ、膨らみまでもたらしている。トロみがあるのに、ULKAの美しいラインを維持するための適度なハリも共存している。理屈を超えた不思議な素材だ。当然ウールなのでシワにもなりにくい。リネンの弱点を克服しながら、リネン以上の情緒を纏った。松村さんが僕に提案してきたこの素材に対する深い洞察が、Koganeには凝縮されている。

そして、Charcoal ST。これはこの春夏に向けて松村さんが作った素材であり、インラインの別の商品に使われていた。組成を見れば、Linen58 Rayon30 Polyester12とある。誰もがトロトロとした落ち感を想像するだろう。 しかし、指先で触れた瞬間に走る刺激は、強烈な“ジャリつき”だ。「言葉で入った情報と違う触感を作りたくて、レーヨンリネンのオリジナル混紡糸にポリエステルを巻いて強撚した」と松村さんは笑う。 あえて綿ではなくポリエステルを巻く。MAATEEのお家芸とも言える、普通ではない一捻りが、脳裏に残る独特のシャリ感を生む。ヨコ糸に打ったリネンと相まって、洗うほどにその凹凸とシャリ感は増していくそうだ。組織はプレーンな平織り、ストライプのピッチはかつての古い背広を思わせるクラシックなもの。本来ならウールで仕立てるようなオーセンティックな外見を、あえてこの変態的な混紡とテクニックで今に表現してみせた。リネンレーヨンの清涼感がある。だが、触れると強烈にドライ。この“情報の逆転”こそが、穿くたびに生地好きの高揚感を覚醒させるのだ。

スタイリングについて。Koganeは生成りからベージュへのワントーンでさらっとおじさんチックに馴染ませるか、あるいは“強色”をぶつけて、これからやってくる暑さを、この軽やかさとともに駆け抜けたい。対して、Charcoal STはモノトーンベースで考えたい。中でも“全身ブラック”のスタイリングが最も推しで、今期はいつにも増して黒をKAKINOHAHANAREに仕入れたつもりだ。去年の夏、何故か黒が着たくなった。でも手持ちが足りなかったから、今期は沢山の“黒”を個人オーダーした。その黒のトーンの中に、このCharcoal STを、質感を違和感に変えて差し込みたい。サイズ詳細は <1> 胴囲81、股上31.5、股下72.5、総丈102、ワタリ幅36、膝幅27、裾幅26。 <2> 胴囲85、股上32.5、股下74.5、総丈104.5、ワタリ幅37、膝幅27.5、裾幅26.5 。<3> 胴囲88、股上33、股下76.5、総丈106.5、ワタリ幅37.5、膝幅27.5、裾幅26.5です。少し色での個体差がありますがニアです。僕(177/ 68)で全てサイズ2を着用。1は丈が足りず、3はサイドアジャスターを絞ると普通に穿けてしまうといった具合。 勿論、上記からの丈詰めも可能だし、折り返し幅が大きいので丈を伸ばすことも出来る。両アジャスターを絞ればウエストでは最大7〜8cmくらいは絞れるので、ULKAをどう穿くかは、ご自身のスタイルでお選びください。デビュー作であるインポート生地のULKAも好素材で好評だったが、この国産生地の“晩春のULKA”はまた別ベクトルの素晴らしさ。飾るための服ではなく、日常の中に違和感と高揚を愉しむ生地好きのためのULKAです。今週も金土の営業。在庫が残りましたら商品帖に更新します。

26.4.17 Fri – 4.18 Sat / 12:00 – 17:00 @柿乃葉
26.4.19 Sun / 12:00 – @柿乃葉商品帖
–
ULKA
Kogane – Wool Knot Check
1 / 2 / 3
66.000 tax in ( 60.000 )
–
Charcoal ST – Linen58 Rayon30 PE12
1 / 2 / 3
59.400 tax in ( 54.000 )
MAATEE&SONS



