2020.10.29
Dress Western Boots
今履きたいブーツってなんだろう。レースアップでは無いしサイドゴアでもない。ウエスタンとかペコスで良いものはないか。とは言え本気のウエスタンブーツやワークもののごつごつしたペコスは、自分の足下にはイメージが出来ない。ちょうど同じことを考えていたユカさんは質実剛健なアメリカのウエスタンブーツのディテールを生かしながら、イタリア・エンツォボナフェの熟練の靴作りをもとに全く別物に置き換えたのです。これが実際にパリで見た、ユカさんらしいバーガンディのベジタン鞣しのウエスタン。
この20AW新作のウエスタンで使われる新しいラストは、彼女自身が1980年代に購入したという某メゾンのブーツのトゥラインをベースに設計されたもの。（勘が言い方はわかりそうですが）その名もHRM。元はと言えば、レユッカスのウィメンズのジョッパーブーツで使われていたラストがHRMで、これは甲まわりのフィットやかかとの包み込みなどを調整し改良したメンズ版のHRMラスト。ウエスタンの特徴的なディテールをまとっていても、これだけ上品に見えるのはこのウィメンズ応用のラストの効果が大きい。シャフトも本気のウエスタンなどに比べると絞られていて、足入れした時に全く違う見え方をするのに気づくと思います。僕もそうですが、甲高や幅広の方が最初に足入れする時は少し窮屈に感じると思います。そんな方はそれこそスーツ用なんかの薄手の滑りの良いソックスで慣らしていって、自分の足に革を馴染ませていきます。
僕は太めの野暮ったいパンツに合わせるのを楽しみにしてますが、裾幅が狭いパンツにも相性が良いので、極端に言えばスーツにウエスタンっていうハズしも可能になるんじゃないかと思います。仕事スーツではなく、友人の結婚式にドレスウエスタン。最高に粋な合わせ方だと思います。そして、この靴のディテールの説明を聞いて最も驚いたのが、上部のトップラインとサイドの割り部分の革にカンガルーを使っていること。野球とかサッカーのスパイクを思い出してしまう素材ですが、革の中でも最も薄く強度があるのがカンガルー。細かいステッチングを施し、負荷もかかるこの部分にだけ使われている。この箇所の複雑な縫製のみ、専門の職人が担当するそう。Le Yucca’sの靴は一見繊細に見えるのに、タフに履ける。こういった細部にまで一切妥協をしない仕事の積み重ねが、エンドユーザーを満足させるんでしょう。
このウエスタンに柿乃葉の特注としてドイツのフローデンバーグ社の黒のボックスカーフを当て込んでいます。座ったらボトムの丈が上がってウエスタンディテールが見え、クッションレングスであれば何にでも合わせられるドレスシューズとして機能させたかった。それにはクローム鞣しのフローデンバーグの黒が最適でした。キメが細かく上質な革質ながら、丈夫で耐久性に優れるこの革。一般的に1.4から1.6ゲージの革が使われますが、1.4くらいだと柔らすぎてブーツだと直立しづらいので、やや肉厚の部分（1.6ゲージに近い厚さの革）を厳選して使っています。
そしてもうひとつ。完全なオリジナルとなるのがメダリオンで、これはユッカスでも今まで使ったことがないデザイン。これはエンツォ・ボナフェが外羽根シューズに使用する穴飾りで、その名もDerby。本家ボナフェのダービーシューズ用のクラシックな意匠が、ウエスタンブーツの甲に入れられる刺繍に類似しているのも決め手のひとつでした。さらにボナフェのメダリオン位置はもっとトゥの先端部から始まるのがクラシックですが、ここも1.5cmほど高めの位置に変更してもらい、ウエスタン由来の方に寄せています。レユッカスのウエスタンブーツを柿乃葉仕様にした“Dress Western Boots”。こればかり履いてしまいそうな、イメージ通りの顔に上がってきて満足しています。
重要なフィッティングについて。既にレユッカスの定番型をお持ちの方は比較的考え方が容易です。自分の場合、Uチップやギリーで使用されるKARENAラストで40.5を履いています。このHRMラストだとハーフサイズアップの41がしっくりきます。僕は先述の日本人の典型足なので、初回の足入れ時はやや時間がかかりますが、かかとが落ちるとしっくりきます。最も負荷のかかるシャフトが足に沿って伸びていき、数回履く頃には脱着が容易になります。細身の足型の方は初回から無理なく足が入ると思います。KARENAと同サイズか、ハーフサイズアップが適すると思います。
受注会の詳細は先日の手記で告知させてもらいました。既に週末のご来店アポや、問い合わせを多数いただき感謝しております。柿乃葉でのフィッティングが可能な方は待ちにならないようアポイント制としており、遠方の方には可能な限り質問にお答えしていきたいと思っています。勿論、フィッティングをしてイメージと違う場合は、オーダーする必要はございません。商品帖からのオーダー希望の方には順次返信をしてまいります。
最後にノベルティのお知らせ。オーダーいただいた方への特典として、Dress Western Bootsのイラスト入りの kakinoha bag 大をプレゼントします。イラストレーター宮川温子が描き下ろしてくれたドレスウエスタン。店頭受注、商品帖受注共にシューズお渡し時にお付けします。アポイントやご質問など、お気軽にご連絡ください。
問合せ info@kakinoha-kamakura.com
