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005 Wallet ( TH )

 

柿)この企画の始まりは確か2、3シーズン以上前でしたよね。細野さんからの届きものの中に手紙が入ってたの思い出します。ロザリアでなく、kakinohaのオリジナルでも何かお手伝いさせてくださいと書いてあって。「おっ、そうきた」と。革小物は好きで良く欲しいものを妄想しているので、これは面白いことになりそうだと思いました。

 

細)一昨年の12月だったかと思います。ロザリアのTiffanyのベルトを納品する時に、年度末の挨拶と共に一筆添えさせてもらおうと思って。kakinohaのオリジナルは柿本さんが欲しいものを一番ベストな人に作ってもらうがコンセプトだったので、革小物なら自分にも良いものが出来そうだと。そうしたらすぐに柿本さんから財布やりたいと連絡もらって。

 

柿)財布のことは常に考えていたんですよ。長くPOSTALCOのケトルジッパーを使ってたんですが、これが割と小ぶりなのに収納力が抜群で。数年前までは割と現金派だったんで。でも最近はほとんどクレジットとスマホがメインの決済になってきて、そしたら財布の中がスカスカになってしまいますよね。一時期はNICENESSのシルバーブレスを買った時に付いてくる革のケースを使ったりしてました。ただ札を3つに折るのが億劫だったり、領収書が入らなかったりと、やっぱり流石に小さすぎて。結局またPOSTALCOに戻ってきました。でもメゾンの財布も違うし、欲しいと思える財布が全く無かったんですよね。

 

細)現金は持つけどあくまで予備みたいな、財布はそんな立ち位置になってますよね。年明けたらすぐ原宿で打ち合わせしようとなり、3パターンくらい企画案を準備持っていたんですけど、それを出す前に柿本さんがこういうの作りたいって提案があって。まさか、3パターンの中の2つは自分が考えている財布とほぼ同じだったというオチでしたね。

 

柿)kakinohaラインは僕手動なので笑。誰に作ってもらうかまでは踏み込んでなかったので、細野さんと作れるとは本当ラッキーでした。

 

 

細)世にないものって考えると、最初の第1希望はあれでしたよね。財布の中に、もう1つ財布が入っているという。マトリョーシカ財布って言うんですかね。構造的に外側のウォレットが大きくなるんですが、柿本さんはそれを極限まで小さく作ってほしいと。

 

柿)超小型のL字ジップのレイヤー財布。kakinohaのお客さんは世にないものを求めてるので。これは用途に合わせてセパレートでも使えて、合体させると新たな部屋が出来て収納が成立するという案でしたね。

 

細) 実は2つ合わせるという財布は、元々メゾンでもあるんですよ。でもそれはかなり大きい財布なので女性的で、kakinohaオリジナルで挑戦したのは全くの別物でした。小さい方はコインケースにもなって、合体させると札やカードの仕切りになる。試作を何回か作って、良さげなのが出来たらその度に原宿で会って柿本さんにテストしてもらって。

 

柿)細野さんすぐ仕事してくれるから、何回もお茶することになりましたね。1週間実際に僕が使ってみての、評価と修正をしていくダメ出し会的な。

 

細)形は綺麗に成立しても、極限まで小さくするというテーマが、機能の上では邪魔しました。小さい方にもジップを付けるのはマストなので、合体させると割と少ない容量でもすぐにパンパンになってしまって。

 

柿)ミニ財布にコインを少し入れると、膨らんで、その外側にあるカードも札もギツギツになって取り出しにくくて。コンビニで水買うだけなのに、やたら手こずって後ろに並んでるお客さんに迷惑かける。マチの工夫とか何度か改良してもらって粘りましたけど、納得できるものにはならなかったですね。それでもうひとつの案にシフトしたんでしたね。

 

細)  これは小さいけど収納性も備えたL字ファスナーで、一万円札が3つ折りでなく2つ折りできて、コインとカード、あと領収書が仕舞えるというお題でした。でもそれだけだと目新しさがないのはわかっていたので、構造から考えることにしたんです。何回か試作を作りながら着地したのが、ボディ、マチ、コインポケットになる部分までを一体にする構造でした。マチとボディが一体なのは過去のメゾンでもあるけど、今回のコインポケットまで一体となる構造は他にはなかったと思います。

 

 

柿)構造からの話は職人寄りの目線で、僕だと考えることは難しいんですが、この案は斬新でしたし、あと単純に見た目が美しい。

 

細)ボディの革は細々したパーツを必要とせず、2つの革を内側に折り返してステッチかけるだけで、コイン収納ポケットの機能まで持たせています。あとは柿本さんから指定のあった“H”の代名詞であるカーフ、通称“ヴォーエプソン”を使っていて、これを薄くすいて2色を貼り合わせました。フランスの革で正式にはDerbyと言います。

 

柿)手帳でも使っているし過去にもこの革のものはいくつか所有してますが、適度にハリがあるので型崩れもしにくいし、発色も良いですよね。本当はもっと派手でも良いんですが、やっぱり飽きも来るだろうと。外装はモダンにして、ファスナー開くと明るい色が出てくるようにしました。

 

細)それプラス、柿本さんから要望のあった外側の片面にポケットをつけて、もう少し収納力を加えましたね。領収書を入れる少し大きめのポケットと、頻繁に使うカード3枚用です。

 

柿)僕の場合は頻繁に使うカードと言うと、クレカ2枚とキャッシュカード1枚になるんですが、すぐに取り出せるとこに配置したかったんです。人によってはスイカでも良いし。それと領収書が結構やっかいなので、これは助かります。

 

細)あと、ムシも引き手部分も全てririにしましたよね。これは革のパーツを通す用の引き手で、ririの刻印もされていないんで外見にはわからないんですけど。スイスから取り寄せしなくてはいけないし、円安での価格の問題も時間もかかるんですが、やっぱり良いですよ。柿本さんがYKKを選べばもっと早く完成していました笑。過去の“H”の財布を見てもririを使っている財布とかあって、今は純正になってますけどきっとririがOEMで生産しているんじゃないですかね。このムシの線の細さとか他になくてエレガントです。

 

 

柿)ここまででも十分なのに、さらに求めました。細野さんとやっている意味を持たせたかったし、一癖欲しい。ハンドクラフト感と言うか、最後にパンチが欲しい。

 

細)革の引き手で変化つけようと、柿の葉っぱを抽象的にした形のものに決まったんですが、それだけじゃ足りないと言われ、また宿題になりましたね。それで思いついたのが、このDerbyの2トーンを生かしてインレイして、それを手縫いで仕上げようと。

 

柿)僕世代だとインレイはやっぱりウルフズヘッドとかHTC。2000年代ですね。ベルトでいくつか持ってました。

 

細)僕はそれこそ柿本さんと10個離れているので、リアル世代じゃないんですが、ヌメにパイソンとかバイカーズとかのイメージはありました。でも通ってないから、インレイは工芸の教材に載ってるものという印象の方が強くて。その技術をリアルなアメカジ流ではなく、上品にして、しかもこの”H”が使う革で落とし込んだら新しいんじゃないかと。実際に作ってみたら、時間もかかるし、出来栄えも納得しなくてもっと面倒なことになりました。

 

柿)ん、それは、どう言うことですか。

 

 

細)インレイをすると、普通は3枚の革で作るんですね。見せたい革を、ライニングとアッパーで挟み込むんです。そうすると当然、アッパー分が一段ボコっと出てしまう。それが通常のインレイであるのは間違いないんですが、手で常に触る引き手だとこの段差が気になったんですよね。それで、4枚を貼り合わせて手縫いしてみたんですよ。具体的に言うとくり抜いた革を戻して、その上に薄くした革を巻くように張り合わせるんです。初めてやったんですが、この作業が大変で。でも、これをすることでフラットな表面になってスライダーとしても持ちやすいし、納得する見た目になりました。

 

柿)そんな細かいことしてるんですか笑。この作業、沢山オーダーいただいたらやばいことになりますね。また、腱鞘炎にならないように気をつけてくださいね笑。

 

 

と、だいぶ長くなりましたが、Rosaria Product.の細野さんが生産するkakinohaのオリジナルウォレットが出来上がりました。サンプル1点ずつの納品もわざわざ鎌倉まで手持ちで持ってきて下さったので、今回はボイスレコーダーで録音して、完成に至るまでを細野さんと振り返りました。2色展開でDerbyのノアにはアイボリー、エトゥープにはライムを当て込んでいて、ファスナー開けるのが楽しくなる仕様です。しかもこれを薄く梳いて貼り合わせて縫製しているので、コインポケットの中や各所までもがバイカラーになります。ここまではなかなかメゾンでもやってないです。写真だけでは伝えきれないので、店頭で説明しますね。このウォレットはあくまで「ごちゃごちゃ入れないでスマートに使いましょう」をテーマにした、現代版のコンパクトウォレットです。カード、札、コイン、レシート(領収書)の最低限の収納性を持たせましたが、この小さいサイズにパンパンに詰め込んでしまっては、見た目も機能的にも美しく使えないので必要なものだけで。それがスマートです。カードは外ポケット3枚だけ使って、内側に入れるのもありです。今回の購入方法ですが、受注生産になります。そして知ってますか、今年の3.21の火曜。この日は一粒万倍日、天赦日、寅の日が一緒にやってくる最強の開運日と言われています。古い日本の習わしで、財布の使い始めはこの日からです。それまでにはお届けするように細野さんに作ってもらいますので、3月中旬までにはお納めできるスケジュールです。いつも通りで予約不可、今週は金土に店を開きますので、いらっしゃる方から受注優先となり、翌日日曜に商品帖で受注可能となります。一般発売も見据えていますが、どちらの色も革の残やパーツの問題で生産数に限りがあり、仮に満了になった際はご了承ください。他の商品なども販売しているので、受注以外の方もご入場できます。どなたでもお越しください。下記、当商品の受注方法になります。

 

①店頭受注
1.27 (金) – 1.28 (土)
両色のサンプルを用意しており、実際に商品を確認しながらお選びいただきます。タイミングによってはお待ちいただく可能性があります。お支払いは前払いで現金、または各種クレジット、お渡し方法を 発送orご来店で選んでいただきます。

 

②商品帖受注
1.29 (日) 正午 – 1.29 (日) 22:00まで
店舗営業日翌日の正午に商品帖ページが更新され、同日22時に締め切りとさせていただきます。お支払いは前払いで各種クレジット、銀行振込から選択いただき、銀行振込の方は1.30(月)15時までのお振込みが期限となります。

 

 

Order Event – 005 Wallet –
23.1.27 Fri – 23.1.28 Sat

005 Wallet ( TH )
Calf Leather “Derby” ( France )
riri zipper( Switzerland )
Noir × Ivory / Etoupe × Lime
55.000 tax in ( 50.000 )
F ( W 12cm × H 9cm × D 1.5cm )
Delivery Date _ Mid – March 2023
kakinoha