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今の気分 23秋冬編

 

HANAREがオープンして早いもので1ヶ月が経った。とにかくオープン直前からは怒涛の日々だった。店に立つのは三浦くんに任せる形ですけど、僕としてはやることが1.5倍近くに増えて忙しくなったので、頭の清掃で波乗りとかサウナとか無理矢理にでも時間作って行くようにしてます。この1ヶ月の間に、顧客様も初めての方も沢山来ていただき、開店のお祝いも多方から頂戴しました。服の大好きな方々に支えられている店というのを実感して、嬉しくなった。本当に有難うございます。さて、HANAREの方も僕が全て仕入れを担当しているわけですが、手記はと言うと柿乃葉の商品ばかりを綴っている始末。僕個人としてはどちらの店舗でも服はそれなりに買ってまして、アイテム数を絞り込んだ柿乃葉だけでは伝えきれないことを、何か発信したいなと。HANAREの商品や私物を交えながら“今の気分”と題し、自己中心的なスタイリングと、商品に対する自分なりの視点などの想いを乗せて、ちょっとだけ掘り下げてみようと思ってます。とは言え、私物を大量に車で運んだりと、びっくりするくらい準備が大変だったので、この繁忙期にやるんじゃなかったと後悔。よって駄文です。何も期待しないで読んでもらえると助かります。不定期更新、これが最後にならないように。それでは。

 

 

今までのモヘアニットって古着屋に並んでいるアーガイル柄とかのイメージでどこか懐かしくて、光沢があって毛足が長くて、温かいけどだいぶチクってするっていう印象だった。このキッドモヘアのアプローチは全く別物。触れて頭から被ってみた時に、かなりしっくりきた。特有のドライタッチのざらっと感はあるが、極端なチクチクは感じない。肌が強い人なら難なく半袖にも着れるだろうし、気になる人は中に長袖を着れば何てことはない。オレンジと赤の中間くらいの僕の中でも最旬な色で、気持ち透け感があるのがまたナイス。中のプリントとかボーダーとか見えるか見えないかくらいだけど、誰にも気づかれなくても自己満に浸れば良い。他人ではなく自分がどうしたいかだ。春じゃなく、秋でこれが出来るのは気持ちいい。ニットを買うならグローブは絶対セット。保温性というよりスタイリングでこれがあると無いとでは、全く違ってくる。あえてニットの袖とグローブを切り離して、その間からおじさんの枯れた肌を見せたり、中に仕込むボーダーのカットソーを覗かせるとまた楽しい。この色はアースカラーに馴染ませれば秋冬っぽくなるし、白ペインターや薄デニムと合わせれば春になる。ニットと抜群の相性のレザーは、所見、突き抜けすぎて苦笑いしてしまった。ボルドーの肩はHでお馴染みのHAAS社のフォーエプソン。見頃は英国高級靴にも使われる同じくHAASのユタカーフ。誰もが憧れるこのフランスの小物用の革を、普通では考えられないレザージャケットに使うというぶっ飛び。肩から財布ですよ。堀切さんの頭の中はどうなってるの。大きく着たくなくて、サイズは1だけ。僕が着てジャスト。最初は直立するくらい硬いけど、オイルも十分含んでいる革だし、これがくにゃくにゃになったらすごいレザージャケットが完成してしまう。トラウザーは先週発売したタックバギーのネップツイード。ツイードってレザーとの相性が本当に良い。ランチ前だと36サイズが普通に履ける。

 

 

Jacket / CLASS / 1 ( KAKINOHAHANARE )
Knit / NICENESS / L ( KAKINOHAHANARE )
T-Shirt / Champion 80’s ( 私物 )
Trouser / m’s braque “Ex” / 36 ( 柿乃葉 )
Glove / NICENESS / F ( KAKINOHAHANARE )
Shoes / adidas 80’s ( 私物 )
Neckless / taupe D.Motoike “Ex” ( 私物 )
Glasses / Frame Flance 40’s ( 私物 )

 

 

一昨年の途中くらいから?去年なんてめっきり着なくなってしまったのがダークトーン。とにかくベースカラーは茶、カーキ、ベージュなどで、そこに明るい色を入れないと気が済まなかった。引き続きその感覚は強く持っているし、常に刺激的な色は求めているが、この秋冬の仕入れぐらいからまたダークトーン達の仕入れがちょっとずつ増えている。HANAREでもそうだし、柿乃葉で仕込んでいる商品も、その傾向は少し見られると思う。黒とかチャコールとかネイビーとかそんな当たり前の色に、また鮮度を感じてしまっているのだ。さて、小柄な中村さんの作る作品のような服達は、どれもが自分自身が着るために作っている。商売気はさらさら無い。好きなものしか作らない。古着は収集はするけど、もう今は自分で作る服しか着てないと言っていた。そんなワガママな姿勢だからこそ、彼の作るものは、50メートル先からも見てもThe Crooked Tailorだとわかる。シルエットは基本的に身幅が広くて丸っこくって、裾にかけて広めでエアリーで、商品のほとんどは中村さん自身が手作業で縮絨をかけている。このシャツも“クルーキット”を体現している。シャツにしてはかなり硬めの素材で身幅も広いしシルエットがしっかり出るので、これはニットやスウェットの上にジャケットのように着るのがしっくり着る。ボタンダウンも外してしまって、だらっと見せたい。だからプレスしたトラウザーが合うのだ。スミクロの羽織りなら、小物で遊ぶのも忘れない。嘘のない自分に正直な人が作る服は、着ていて気持ちいい。高揚感がある。

 

 

Shirt / The Crooked Tailor / 48 ( KAKINOHAHANARE )
Sweat / Champion 60’s ( 私物 )
T-Shirt / Champion 80’s ( 私物 )
Trouser / kakinoha ( 私物 )
Boots / Le Yucca’s “Ex” ( 私物 )
Bag / NICENESS ( 私物 )
Neckless / taupe D.Motoike “Ex” ( 私物 )

 

 

常にテーラードJKTを中心としたスタイリングを考えている。そう偉そうに言い放ったが、服が好きな人が5人集まれば、4人は同じことを考えているはずだ。ここ何シーズンかで落ちていた肩線は上がってきて、ビッグサイズというワードはもう退屈に感じる。シャツやトラウザーは大きく着ることがあっても、テーラードJKTは体に合ったものが良い。が、普通に着たとて、何にも面白くないのがテーラードJKT。その崩し方をこれまでも提案してきたつもりだが、今、個人的にはベストとのスタイリングが面白い。その中でも1番好都合なのが、テーラードの下にもベスト、上にもベスト。これが1つのベストで出来てしまうこと。それを達成するためのパターンなのか?と思うくらい、何もかもがちょうど良く作られているのが、NICENESSのバッファローの逆ハベスト。僕の場合、Lだとインアウトが実現できるので、このサイズのみを仕入れた。タンニン鞣しのエジプト原産のバッファローレザーは、ワイルドでコシがあるのにオイリーでしなやか。とにかくこの革が気に入ってしまって、A-2やLOWEなど色々仕入れた。ジャケットで迷っていたら、エムズブラックを頼った方が良い。エムズはテーラードが下火の時も欠かさず毎シーズン提案してきた。松下さんはクラシックとモードをよく知っていて、美しいパターンで体を包み込むような立体的なジャケットを仕立てる。このダブルはエムズのジャケットの中では適度なゆとりがあって、軽くて動きやすいのに、やっぱり美しい。先述のベストも、外にも内にも気分よく着れてしまう。テーラードの崩しアイテムにと思って仕入れた、最高に渋いツールバッグは柿渋染めによるもの。こういった伝統工芸的なアプローチは小生の大好物である。一見野暮ったくなるこういった素材を、どう着こなせば生きるのか考えるのが好きだ。36色絣と同じく気に入りすぎてしまい、これから柿乃葉でも何やら準備中。ブラウンの逆ハと、今年受注会を行ったLe Yucca’sのダブルモンクの相性もばっちりだった。

 

 

Jacket / m’s braque / 40 ( KAKINOHAHANARE )
Vest / NICENESS / L ( KAKINOHAHANARE )
Shirt / MAATEE&SONS / 2 ( KAKINOHAHANARE )
Denim / U.S NAVY 40’s ( 私物 )
Shoes / Le Yucca’s “Ex” ( 私物 )
Bag / NICENESS / F ( KAKINOHAHANARE )
Belt / Rosaria Product. “Ex” ( 私物 )
Neckless / taupe D.Motoike “Ex” ( 私物 )
Glasses / Frame Flance 40’s ( 私物 )

 

 

展示会で見た瞬間は「変なシャツだな」だったが、着てみると「何これ、めちゃくちゃ気分じゃん」に変わったハイネックシャツ。襟をペタっと寝かしてシャツオンシャツも良いし、タートルの上から着るとジャケット気分になる。でも自分的なこのシャツの醍醐味は上まで留めて、ハイネックで着ること。ふんわりとした襟回りで、ニットや天竺のタートルネックでは到底出せない、何ともダサい首元になる。これがジャケットのインに着る時に、他には無いバランスを生み出すのだ。ジャケットはかなり気にいってしまっているが、数が少ないので三浦くんに「買っていい?」と言い出せないCLASS。フロントはセミダブルと言えばいいのか、シングルとダブルの混血的な重なりを持っていて、ボタンを留めると今の気分としてはシェイプが強いので、僕なら今年は前を必ず開けて着る。ハリコシのあるDORMEUILの生地もまさに質実剛健という感じで、スナイパージャケットのディテールに薄くダウンを入れるというデザインも相まって実に男らしいし、妙に玄人感あって、本当にかっこいい。今買っとかないともう買えないという、古着屋で見つけた衝動的感覚にも近い。そしてデニムはクルーキット。このデニムもぶっ飛んでいる。10万を超えるデニムはリーバイス以外で買ったことない。元ネタは僕の大好きなUS Navyの40sで、これは中村さん自身がミシンを踏んで、手で縫って作っている。ボトムスはどの工場に出しても、満足いく作りにならないそうだ。内側の仕様なんて手仕事感満載で見ているだけで胸が熱くなるし、どストレートのシルエットも大好きだし、このデニムも是が非でも所有したくなる。が、作れないという理由で減産になってしまって、これも三浦くんに「買っていい?」を今は言い出せない。デニムのワンウォッシュなんて(僕は)あまり気分じゃないんですが、そんなの関係なく、自分で落とせばいいと思わせてくれる。素晴らしいものは素晴らしい。人の心を動かすものに、理由なんて無いのだ。

 

 

Jacket / CLASS / 2 ( KAKINOHAHANARE )
Shirt / NICENESS / L ( KAKINOHAHANARE )
Turtleneck / BLACKBIRD / 1 ( KAKINOHAHANARE )
Denim / The Crooked Tailor / 48 ( KAKINOHAHANARE )
Shoes / Le Yucca’s / 40.5 ( KAKINOHAHANARE )
Belt / Rosaria Product. “Ex” ( 私物 )
Socks / Pantherella ( 私物 )
Bag / NICENESS “Ex” ( 私物 )