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タキシードをどう崩すか

 

アルド・マリア・カミッロによるAMCがスタートする。ヴァレンチノ、エルメネジルド・ゼニヤ、ベルルッティ、カルーゾなど錚々たるブランドのメンズデザインを担当し、所謂テーラー畑を主に手腕を振るってきたアルド。彼のクリエイションに惚れ込んだUA栗野さんがプロデューサー、カルーゾやピッコロなどのエージェントと日本屈指の背景で物作りを行うユマノスの中尾さんが生産的な立場、そしてアルドがデザインを手がける。41歳の僕より若いデザイナーがどんどん出てくる中、ファッション業界を引っ張る大先輩3人がタッグを組んだAMCは、最近の流れ、トレンドとは視点もクリエイションも異なっている。基本的な構成としてはジャケット、トラウザー、シャツのみ。栗野さん的に言うとここでのスーツは“自由な背広”的な解釈。いつしかビジネスシーンの道具となってしまった“背広”を自由に崩して楽しんで着よう。おそらく、AMCもこの考えが根底にあるはずです。コレクションはと言うと、パッと見でわかりやすい飛び道具的な要素があるわけではないのに、少し前にタイムスリップしたかのような懐かしさもあって、とことん潔くて新鮮も感じたんですよね。コレクションの中にフォーマルな黒タキシードと言える拝絹ダブルのウールギャバがあって、着てみたらめちゃくちゃかっこいい。23AWにタキシードなんていう発想は全くなかった。でも衝動的にこれだと思った。“おもいっきりカジュアルダウンさせたタキシードスーツを作って、さらに着崩す”。今回の商品のテーマが決まりました。そこで選んだのがネイビーとブルーの中間的なウールサージ。「背広はサージに始まり、サージに終わる」という言葉もありますが、この生地はサージでもちょっと特殊と言いますか、ぎゅっと詰まったやや荒めの綾織りで、クリアもかけずに毛羽立ちを残しています。”ワイルドサージ”と言ったら良いでしょうか。質感がマットで、誰もが持つタキシードのイメージとは相反するもの。この生地だったら、最初の見えがかりからフォーマル崩しが成立するだろうし、AMCの服はどれも納品前に丸洗いするから、これがまた良いんですよ。拝絹もネイビーにしてもらって、シワ入りで脱力したブルータキシード。ジャケット全盛な中、ミニマムなのに新しさの感じる良いものが出来たと思います。

 

 

 

 

当然単品でも着れるのですが、シーンによっては背広としても自由に着てほしい。ジャケットはインラインのBrianから拝借。Brianの由来は、英国のミュージシャン、ブライアン・フェリーから。ジャケットスタイルがアイコンで、栗野さんの特にお気に入りの人みたいですね。ピッタリの肩に、細みの腕、ウエストのシェイプは弱くて、長方形型と言えば良いでしょうか。テーラー畑のキャリアで伝統的なスーチングを熟知しながらも、不思議とこのジャケットは体に沿わせることをしていない。アルドは意外にも趣味がギターだったり、生粋のスケーターだったり、90年代から2000年代にかけてのマルジェラ、ラングに心を奪われた1人でもあって、AMCがやりたかったのはクラシックは作りとして担保して、見せ方はモード解釈なんじゃないでしょうか。仕立ては日本最高峰のスーツ工場。Gなんかのお抱えで、なかなか枠も入れない工場ですが、これは中尾さんの剛腕による成果かと思います。組下のパンツに選んだのはこれもインラインのJulian。画家で映画監督のジュリアン・シュナーベルから。パジャマの人。これも栗野さんのお気に入りなんでしょうか、因果関係はわかりません。パターンはと言うと、ややコンパクト目な腰まわりに2タックで運動量を確保、そこからややルーズ気味に落ちるストレート。とにかく形が綺麗で、なんか懐かしい。このパターンからも、90年代後半から2000年代のモードな香りがします。ウエストには同じく切り替えの拝絹で、片玉のポケットは織りネームが外にも出せるデザイン。ジェネラルリサーチ思い出してしまう。光沢のあるウエストに、古着のネルシャツとかで真逆の要素を加えると、ギャップが出て面白いんですよね。ジャケットのサイズは46で着丈76、身幅52、肩幅44、袖丈63、48でジャケットが着丈78、身幅54、肩幅45、袖丈64。トラウザーは46で総丈111、胴囲41、股上33、股下82.5、ワタリ33.5、裾幅23.5、48で総丈112、胴囲42.5、股上33.5、股下83.5、ワタリ34.5、裾幅24です。トラウザーはフラシなので、裾はここから上げていただく形になります。僕の着用は46です。どジャスト。この色と素材にしたのでスタイリングはかなり幅広いかと。擦り切れた薄手のスウェット、カレッジTee、ネルシャツなど、こってこてのアメリカ古着も良いし、Vintage adidas、古ものじゃなくてもウエスタン、ワークシャツ、ヘンリー、タートル、ベストなどとにかく崩しを楽しみたいです。ドレスシャツにボウタイで、仲の良い友人のフォーマルシーンにも最高です。

 

 

 

 

そして、もう1型用意しました。上のダブルと同型のBrianになりますが、これはコンセプトを少し変えてダブルのブレザー。袖口のボタンは違います。意図的に肉がある生地を探して選んでいて、よって着る期間はタキシードスーツより短くなると思いますが、その分アウターに近づくという解釈です。英国的なチョークストライプ、ミディアムグレーですね。この生地は、先日のエムズのツイードのように、ウール主体にポリ、ナイロン、アクリル、レーヨンなど化繊がミックスされています。適度に肉もあるし、表面がフラノのように起毛感があって柔らかくて軽い。これは着用は48です。僕の場合、どちらのサイズでも着れますが、どう着るかですね。MAATEEが出す赤が潔くて好きで、今回のチープチノもMADWORKも個人オーダー。気づいたら3シーズンで4着目のMAATEEレッド。全然意識していないんですが、僕の脳みそには1番旬な崩しカラーなんだと思います。このグレーチョークには本当に合いますね。共に裏地はややコシのあるコットン、袖からキュプラです。是非、細部を見てください。表も裏もそうですが、手の仕事やクラシックディテールを沢山見ることが出来ます。素晴らしいです。今週も金土と店頭営業します。日曜正午に商品帖を更新しますので、フィッティング出来ない方はそちらをご覧ください。日曜はRIZIN44で埼玉です。ハズれ試合無し。明日から3日間、そわそわします。

 

 

 

 

23.9.22 Fri – 9.23 Sat
柿乃葉 / 12:00 – 17:00

Ex Bryan Evening Serge
Wool Serge
Other – Triacetate80 Polyester20
Lining – Cotton / Cupro
Blue
46 / 48
137.500 tax in ( 125.000 )

Ex Julian Evening Serge
Wool Serge
Other – Triacetate80 Polyester20
Blue
46 / 48
62.500 tax in ( 60.500 )

Ex Bryan Stripe
Wool58 Polyester36 Nylon3 Acrylic2 Rayon1
Lining – Cotton / Cupro
Gray
46 / 48
137.500 tax in ( 125.000 )
AMC