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今の気分 23秋冬編 ( 2 )

ようやく残暑にも陰りが見えてきたと思ったら、途端に袖ものやアウターの動きも活発になってきました。あんなに暑かったら、何買っていいか分かりませんよね。そんな中の“今の気分”第2回目。今回も私物を交えて、商品の掘り下げと自分的な視点、今こう着たいというリアルなスタイリングを組んでいきます。

 

秋冬のスタイリングと言いながらの、色だけは春全開。トラッドベースのサックスワントーン。アパレルショップは寒くなれば当たり前に、ダークトーンの服ばかりが店に並ぶ。当然、着る側も同じになるわけだが、そこで敢えて季節外れの浅いブルーのワントーンとか、白とかベージュ系のワントーンを身に纏って、外に出るのが楽しかったりする。アンスナムと作ったこのニットはあんまり人気とは言えなかったけど僕個人としては大ヒットで、結局3色とも買った。ボタンをいくつか開けた時のレイヤーを何パターンも考えて、ジャケットやアウターから見えるバランスを探るのがすごく面白い。その隙間に差すのに、シルクスカーフなんてのもそろそろ良い。トラッドな雰囲気が簡単に出せるのは好都合だし、シャツも第2ボタンくらいまで開けるのが当たり前になってきた今、何かと今なファッションアイテムだと思う。NICENESSがイタリアのFRATELLI LUIGIと共作したシルクスカーフ“RUCHER”は、最初から折られている長方形フォルムで、小ぶりでダマにならないので、ちょっとガサツな人でも簡単にひょいっと巻ける。シャツの内側に巻くシーンでは、襟の内側に汚れがつかないというメリットもあるから、オイリーなおじさん世代はひとつやふたつはお気に入りを持っていたい。そして、MAATEEのチープチノ。僕も赤チノを買ってから頻繁に履いてて、これはおすすめ。とにかく楽で履きやすいし、細くも太すぎでもないシルエットもきれい。マットな表情に密度は甘くて、柔らかさもカリッと感もあるという不思議な質感。今、探してもこの類いは無いはず。加工で安見えを狙ってこの質感に着地したそう。薄BlueならベージュのツイードJKTとか、グレーのモヘアJKTとかにも相性が良くて、適度な違和感も出せるはず。チープチノとは名ばかりで、細かなディテールも手を感じるものだったりと色々とうるさい。価格も展示会で見て、ちょっとびっくりした。

 

 

Knit / ANSNAM “Ex” ( 私物 / KAKINOHAHANARE )
Shirt / Sears 80’s ( 私物 )
Trouser / MAATEE&SONS / 2 ( KAKINOHAHANARE )
Scarf / NICENESS / F ( KAKINOHAHANARE )
Shoes / adidas 80’s ( 私物 )
Belt / NICENESS “Ex” ( 私物 / KAKINOHAHANARE )
Glasses / Frame Flance 40’s ( 私物 )

 

 

サックスワントーンと同じ考え。秋冬のアイボリーからベージュのワントーンは大人っぽく見える。小物も個性あるものを選んで、大好きな柄もいっぱい組み合わせるけど、ベースカラーをまとめると普通に成立する。今、スタイリングには欠かせないのがBLACKBIRDのシャツ。1960年代の“B”が1番良かった頃のアメリカ製のBDシャツをベースに、ウールのオープンカラーシャツでお馴染みの“P”のステッチを襟裏に採用したり、色々ミックスさせながら全く違うテイストにしたこのシャツの最大の見どころは、マオリ族から連想した大胆な刺繍付きのカフス。この袖口のデザインはどっちかと言うとウィメンズ的で、メンズファッションにはあんまり見かけない。裄丈の設定は長めなので、レイヤーした時にこの刺繍カフスが見えるように考えられている。これがめちゃくちゃ気分なのだ。ジャケットやアウターの袖から刺繍が見えるか見えないかで、雰囲気は大きく異なる。今回のようにプルオーバーのニットや、カーディガンの下でもハマり役で、袖元のレイヤーという“今の気分”を満たしてくれるし、他のシャツには無いポテンシャルに溢れている。アウターはm’s braqueで、見た目はゆとりあるダブルのジャケット、でも要素としてはコート。お得意のウールに化繊ミックスで軽さもあって、英国的なガンクラブでもクラシック過ぎず軽快に着れる。ダブルブレストっぽくトラッドに持っていってもいいし、首元まで留めてブルゾンのように着ても良い。NICENESSと作ったラクダ革パッチワークのLOWEもここからが本番で、ベージュやブラウン系の服に馴染ませるように合わせるとアクセントが作れる。どこまでいけるかわからないがソックスの肉や素材を変えながら、秋冬のサンダル履きに今年は挑むつもりだ。小物選びは冬も重要で、味気ないスタイリングにも癖を作りたい。

 

 

 

Coat / m’s braque / 38 ( KAKINOHAHANARE )
Knit / MAATEE&SONS “Ex” 21AW ( 私物 )
Shirt / BLACKBIRD / 1 ( KAKINOHAHANARE )
Trouser / kakinoha ( 私物 )
Shoes / DIMISSIANOS&MILLER “Ex” 23SS ( 私物 )
Bag / NICENESS “Ex” ( 柿乃葉 )
Socks / Pantherella ( 私物 / KAKINOHAHANARE )
Glasses / Frame Flance 40’s ( 私物 )

 

 

このウエスタンブーツの出番がまた増えてきたのは、また黒を受け入れることが出来るようになったこともそうだし、アメリカテイストで崩すのが気分だからだと思う。チェックのウエスタンシャツの上から着たのはBLACKBIRDのフラッグシップモデルであるディレクターズジャケット。このジャケットもぶっ飛んでいる。素材は久々に耳にしたニードルパンチ。モールスキンのような高密度のブラックウールと、ウールチェックを針で絡ませながら、1つの生地にしている。裏がチェックなのは裏地でなく、ただの生地の裏側なのだ。只者ではないとすぐわかる力ボタンは、古い絨毯を切り抜いたもので、職人がハンドで処理したりと此処もすごい。テーラリングの技術も秀逸で、体にフィットするのに動きやすい。BLACKBIRDチームのパタンナーは、あの日本のTOPブランド“G”のパターンも引いているそうだ。ウールだけど着て洗い込んで欲しいというブランド側からの提案もあるので、素直に汲み取っておもいっきりラフに着てしまいたい。しっかりとした肉があるジャケットだが、インにヘビーなニットは着れないので、寒くなれば上からベストを着る。ensou.のベストはと言うと、まず厚手のブレザーを作った後に、袖をちょん切っている。その断面からは副資材なども覗いていて、ensou.らしいパンクス精神を感じる。素材は元々は英国製のツイードチェックで、黒くオーバーダイしてあえて柄を潰している。自然光でやっとわかるくらいに。仕上げに金のラメ糸で、ラフに手縫いしてアクセントにしたようだ。こんな面倒なことを楽しんでやってしまう西川さんの一匹狼感が堪んない。黒に黒を重ねてモノクロームに着る、アルチザンなパワーレイヤード。これまでの生地残を使ったアソートのポーチに、ボトムスはブリーチデニムで弱々しめに引き算した。

 

 

Jacket / BLACKBIRD / 1 ( KAKINOHAHANARE )
Vest / ensou. / L ( KAKINOHAHANARE )
Shirt / ensou. “Ex” 22SS ( 私物 )
Denim / MAATEE&SONS “Ex” 23SS ( 私物 )
Boots / Le Yucca’s “Ex” 20AW ( 私物 )
Bag / ensou. / F ( KAKINOHAHANARE )
Necklace / taupe D.Motoike “Ex” 23SS ( 私物 )