2023.10.04
育てるVOLTON
1年ぶりに作りました、VOLTON。前回もこれで最後と思っていたんですが、履いてくださっている方も多くて、それを見るたびにやっぱり強さのある良いトラウザーだなと思ってしまう。で、4作目は“育てるVOLTON”です。VOLTONのあれこれについては、これまでの手記を全て1番最後に貼っておきます。是非、覗いてみてください。今回の素材は、前回のスラックス見えと180度異なる柿渋の鉄焙煎です。23AWでNICENESSがリリースしている生地ですね。こういった民藝的なアプローチは放っておけず絶対身につけたくなってしまう。今作はこのダイナミックな見た目と、経年美化としてもデニムやレザーと匹敵するほど魅力に溢れているこの柿渋を、“極太パンツ”という僕自身のテリトリーの方に寄せました。
日本で1000年以上前から存在する伝統的な技術である柿渋染め。若くて青い渋柿の汁を1年以上発酵させて原液を作るところから始まり、手作業で染めていきます。耐水、防臭、抗菌など効能的にもメリットの多い染めですが、より特徴的なのが経年変化。当然、デニムと同じように摩擦などによるアタリの部分は色が抜けていきます。だけど、それ以外の部分は使えば使うほど、古くなれば古くなるほど深み、渋みが増します。これはタンニン染めの特徴でもあるんですよね。安易に例えるならば、色が落ちていくインディゴデニムと、色が濃くなっていく植物タンニン鞣しレザーの、両方の特性を併せ持っている。素材好きにとっては、こんな魅力的な染め、他に無いんじゃないでしょうか。このベースの素材はコットンキャンバスで、生地の状態で染めています。キャンバスと聞いただけで「かたい?」と思われるかもしれませんが、ダックよりは薄い生地で、既に製品洗いもかかっていて、ハリはそこまで強くないです。着込んでいくとキャンバスは柔らかくなるので、もっと体に馴染んでいくと思いますよ。今回は柿渋+鉄焙煎を選びました。鉄粉と柿渋を煮出して手で揉み込みながら定着させる手法であり、柿渋単体よりさらに深みがあり、ブラウンとカーキが混ざり合ったようなワイルドなムラが出ています。このド迫力な質感、ヌバックレザーのようにも見えませんか。
細部を見てもとんでもない作り込みがわかると思います。フロントのボタンは全て奥光りのある本水牛。腰裏、マーベルト部分の生地は、メインとオンス違いの薄手のキャンバスです。製品洗いの際に、狙ったように柿渋を移染させてマーベルトも染まっています。裏のステッチに目をやると、ワイルドな素材と相反するように、手縫いを駆使した繊細な職人の仕事が見えてきます。その他、今までのVOLTONとの違いがあります。この素材の特徴を考えた時に、イージーパンツである必要は無いですから、まずウエストのドローコードを省きました。ここはベルトに頼る。裾のドローコードも無くしてしまって、その代わりに内側に牛革を貼ってもらいました。靴によってハイウエストにすることもあると思いますが、そんな時にロールアップすると裾レザーが登場してアクセントになります。この、とことんな詰め込み方が、NICENESSであると思います。サイズに関してですが、今回もMMとMLの2サイズで、ウエスト含めた幅は同一、股下だけが変わります。MMが総丈102、胴囲44、股上37.5、股下64.5、ワタリ36.5、裾幅28.5、Lが総丈105、胴囲44、股上37.5、股下67.5、ワタリ36.5、裾幅28.5です。スタイリングに関しては、いくつかイメージがあって、まずジャスト&ワイド。コンパクトなトップスとの相性の良さ。特に短い丈だとより合うはずです。それと色物との相性の点では、どんな色も受け入れてしまいます。サックス、グリーン、ボルドー、その他もなんでもいけます。そしてVOLTON3の“スラックス見え”とは正反対と書きましたが、これは究極のカジュアルパンツと言えるでしょう。立ち位置としてはデニムと同じ。ジャストサイズのテーラードJKTや、レザーブルゾン、綺麗なニット。そんな品のあるもの達の崩しパンツとなり、良い関係性を作れると思います。秋から春にかけて3シーズン楽しめますし、ガシガシ履き込んでもらって自分色に育てて、色々な美しい服とのギャップを楽しんでみてください。洗濯は可能ですが、最初の段階は移染の可能性もあるので、単品洗いから始めてください。さて、今週も金土の営業です。問い合わせも沢山有難うございます。天然の草木染めの部類で当然大きく個体差があるので、是非、店頭で実際に見ていただきたいです。在庫が残りましたら、日曜正午に商品帖に更新します。
23.10.6 Fri – 10.7 Sat
柿乃葉 / 12:00 – 17:00
–
Ex VOLTON 4
Cotton / Partly – Cow Leather
D.Brown – Kakishibuzome & Tetsubaisen
MM / ML
82.500 tax in ( 75.000 )