手記 > “H” Wool Madras Ch Summer Jacket

“H” Wool Madras Ch Summer Jacket

 

去年にこちらを企画してどっちも買って試してみたのですが、特に”H” Woolの着心地は今までに味わったことのない革新的なもので、さらに深掘りしたくなりました。夏用の布帛にはカディコットン、リネン、シルクなど素晴らしい生地が色々ありますが、そのどれと比較しても、清涼感、ドライタッチ、生地の強さにおいて”H” Woolは抜きん出ていると思います。本当に素晴らしい生地だと思います。元々、松村さんが生地屋の女性と共に、”H” を愛し”H” を超えてやろうの意気込みで開発した素材。簡潔に言うと超細番ウールの強撚糸なのですが、この糸が細番すぎて織機にかからず織ることすらできないので、補強糸として水溶性ビニロンを一緒にして織り上げ、加工時に水ビを溶かして元々のウールだけを抽出します。この手間のかかる工程を経て完成するのが”H” Woolです。限りなくサラサラしていて、多湿な日本の夏にとってこれに勝る布帛は僕の知る限り見つかりません。

 

 

 

 

 

当然、昨夏に最も着用した長袖の布帛ということもあって、さらに利己的なものを創りたいと、今年は柄からトライさせてもらいました。毎回ネットに入れて洗濯機で洗ってまして、生地が強くビクともせず、シワにもなりずらいことは”H” Woolの大きな特徴と言えます。昨年は松村さんが作ったブラウンのチェック、通称“ジジウール”でどちらかと言うと秋の顔でしたが、オリジナルで作れるのなら夏っぽく見た目も涼しさのある軽快なマドラスでいきたい。20代前半の頃に着ていた、60sアメリカ製アイビー期のマドラスBDシャツを箪笥の奥から引っ張り出して松村さんに送りました。そのシャツはネイビー主体のチェックだったのですが、柄の構成はそのまま生かし、色はネイビーの濃度を薄めながら、新たにイエローを大胆に乗せて行きます。この夏、グレースラックスとデニムをメインに考えていた僕にとって、今最も新しい旬で合わせやすいチェックがイエローにブルーの組み合わせです。細かく言うと、レモン系のイエロー、浅いネイビー、白に近い薄ブルーの3色構成です。そしてこのオリジナルマドラスはシャツではなく、ジャケット型へ落とし込んでいくのですが、春夏の展示会で松村さんが作っていた夏用ジャケットに理想のものがあったのでそれをベースとして使わせてもらうことになりました。

 

 

 

 

 

「とにかく軽さを追求した」というジャケットで、裾以外の全ての端の処理が7ミリの三つ折りにしており、その7ミリの中に4本のステッチが入ります。これは1本づつミリ単位でずらしながら同じ箇所を4回縫っているんです。もちろん、このジャケットは特殊すぎてシャツ工場で縫うことは出来ません。裁断から縫製までを1人の職人が丸縫いしています。その職人の仕事は普通の縫製工場だと“やっかい”とされる少量生産のみを受けていて、所謂“マスプロダクト”ではないのです。この端の始末はデザインの特徴ともなっているのですが、松村さんの1番の狙いは、通常ジャケットに存在する“見返し”を省いてしまうことでした。見返しが無いことで生地に重なる部分がなくなるため、本当の意味での一枚仕立てとなります。”H” Woolと組み合わさったこのジャケットの涼しさはワールドクラスです。昨年よりも価格は上がってしまいましたが、この特殊な縫製での工賃と生地値増によるものです。その他、裾は切りっぱなしのような表情に見えますが、ここはセルビッチを使っています。スウェットで言うところのリバースウィーブのように、生地の通常使いではなく、90度倒して縫製しています。その他、ボタンはクリア処理をしていないナチュラルなシェル、裏の力ボタンにはウォッシャブルレザーをお願いしました。

 

 

 

 

 

 

4つボタンになります。着方としては1番上まで締めると小襟のブルゾン的、第2または第3を留めるとジャケット的な見え方になります。ここでジャケット“的”と言うのは、ラペルの返しのプレスもしておらず、パターンさえもジャケットの概念を取っ払っているからです。ラペルの決まりが悪いのではなく、決まらないように作ったという松村さんのヒネりです。季節的にも適当にダラダラ着るくらいが丁度いいと思うので、仕上げに製品洗いをかけました。原型のMAATEEのジャケットはサイズ3までで、サンプルで作ったサイズ3を着てみたところ、この生地だったら上のサイズの需要もあるだろうと言うことで、サイズ4をグレーディングしてもらいました。僕でサイズ3でちょうど、サイズ4でオーバー気味といった具合です。夏以外の季節にインにニットも着たりするのも良いと思ってまして、ご自身のスタイリングと照らし合わせてお選びください。僕は4にしようと思ってます。細かい寸法は3で着丈75.5、身幅59.5、肩幅47、袖丈62。4で着丈76.5、身幅61.5、肩幅49、袖丈63なります。ご家庭での洗濯で縮みは無いと考えて良いです。スタイリングは先述の通り、僕なら今年はグレースラックスかデニムがメインになりそうです。お気に入りのTシャツの上にさっと羽織って外に出て、日中暑いなら袖をまくる、タスキがけする、腰にぐるっと巻いてしまう。シワにもなりずらい、嵩張らないので、適当に丸めてバッグに入れておくのも平気です。飲食店や映画館などエアコン下ではまた必要になってきます。あと夏にショーツを履くと言う方は、ベストな組み合わせになるはずです。ハワイにも良いですね。あとはANSNAMのTailored Vestを下に着てやるとユニークで良かったですよ。所有している方はぜひ。余談ですが、このベストのパターンが本当に気に入ってまして、秋冬生地でまたトライするつもりです。金曜はイレギュラーで14時から17時の営業、土曜は通常通りになりますので、お間違えのないようにお願いいたします。在庫は日曜の正午に商品帖にて発売します。

 

 

 

 

 

 

23.5.26 Fri 14:00 -17:00 – 5.27 Sat 12:00-17:00

Ex “H” Wool Madras Ch Summer Jacket
“H” Wool
Yellow Blue
3 / 4
79.200 tax in ( 72.000 )
MAATEE&SONS