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今の気分 23秋冬編 ( 3 )

寒くなったと思えば、すぐさま20度越えがやってくる。それでもようやっと冬がやってきたようだ。今季も沢山買い物したけど、ようやく頑張らずに冬服が着れるこのタイミングで“今の気分”の3回目。こうやってピュアにスタイリングを組もうとすると、今、自分が何に引っ張られているのかが良くわかる。強めの差し色、そして日に日にワントーンが気になってきているのは間違いない。春にはどうなっていくんだろう。

 

 

去年の自分に全くなかった色が黒。と言うより黒をポイントで使うのも嫌だったはずなのに、ここ数ヶ月で途端に新鮮に見え出した。ウィメンズ的なニュアンスも気になっている反面、“ストイック”や“男っぽさ”といった真逆の要素にも何か新鮮さを感じているのかもしれない。黒を要所で着始めると、やっぱり真っ黒なスタイリングをしたくなる。ただ、ゆるっとしていてスポーティーな所謂“ノームコア”的な着方は、面白みがなくて今のところ興味がない。黒なら少しガチャっとした方が良いのだ。展示会で真っ先に個人オーダーしたのが、レザーパッチ付きのセーター。このクラシックなハンティングデザインは、銃を構える右肩にのみ牛革が張り付けられる。素材はカシミヤ和紙ウールで、これは数年前にカウチンセーター用に開発した糸らしく、モンゴル産カシミヤ、強撚したシェットランド、和紙という性格の違う3つを撚糸してごちゃ混ぜにしている。それぞれの素材の持つプラスマイナスを補うように、カシミヤで柔らかさと温かさ、ウールでざらつき、和紙で保形性を持たせているのだ。そして編み組織は天竺の度違い、所謂フラットな天竺ではなく、より凹凸が出るような表面感となる。これは職人が非効率な手横機で編み上げていて、やっぱり持ちも温かみも違う。しっかり肉はあるけど、僕はジャストで着たくて2を買った。ニットの下にちらっと見える白はスビンヘンリー。そこには真っ黒な太めのチノパン。黒パンは面の綺麗なウールだと学ランになるから、コットンの方が断然合わせやすいと思う。自分としては過去にディッキーズやベンデイビスを履いていたかのような感覚だが、E.PENNYはその最上級版と言えようバランス感であって、今1番履きたい黒パンである。素材は太番手の三子撚り糸をタフに硬めに織り上げたオリジナルのチノツイル。そこから生地を揉み込んで、強靭なのに柔らかなタッチまで持ち上げているが、ここから履きこめばゆっくりとグレイッシュに変化していくし、生地もさらに砕けていく。カジュアルな顔に育ったとて、アイロンでセンタープレスしながらスラックス的に履いていたい。さらに、コットンチノのくせにボタンはオール本水牛とイキってて、ヒップポケットの内側はごっそり牛革に変えられている。こんなわかりにくい部分にこそ魂を注ぎ込む姿勢にベットしてしまう。ここに重ねるのは黒ウールメルトンのレイヤードコート。柿乃葉でも素材から作らせたもらったこれの原型である。最初、その柔らかさからカシミヤかと思った。ウール100ではあるが、どうやらカシミヤに匹敵するほど細い糸らしい。ベスト単体、ノーカラー単体、レイヤーして2パターンと、季節を変えた4つのリアリティあるスタイリングが保証される。そして、このノーカラーには目を見張る部分がある。キワに目を向けると、ぐるっと全方位に白いハンドステッチが入る。これはウールメルトンのみの仕様で、ツイードとは異なる。しつけ糸の役割も果たしているのだが、洒落てるのでこれは取りたくない。そういった手作り感がBLACKBIRDの懐の深さだと思う。黒が日常的な人にとってはこれ程ないアウターだろう。

 

 

 

Outer / BLACKBIRD / 1 ( KAKINOHAHANARE )
Knit / MAATEE&SONS / 2 ( KAKINOHAHANARE )
Cut Saw / MAATEE&SONS / 2 ( KAKINOHAHANARE )
Trouser / NICENESS / M ( KAKINOHAHANARE )
Shoes / adidas × Mita Sneakers 14SS ( 私物 )
Belt / Rosaria Product. ( 私物 )
Glasses / Lunor ( 私物 )
Necklace / taupe D.Motoike “Ex” 23SS ( 私物 )

 

 

 

詳しくはこちらで語らせてもらっているが、このニットは僕の中ではかなり満足度高いものに仕上がった。力作だ。身幅はややゆったり気味だが、リブ回りの強めの締め付け、肩からアームにかけてコンパクトに作ったので、ジャストなツイードジャケットでも、ゆったりとしたコートでも、シルエットに左右されずほとんど着れるはず。肌との密着度も高いので余計に暖かいし、今日のように中にVシルクなどを着れば、この強々圧縮の極上のタッチをダイレクトに感じることができる。染めもしてないピュアそのもののナチュラルカシミヤは、異次元の気持ち良さだ。ムートンベストもこちらで綴っている。ジャケットの上に羽織って大胆に崩すことも出来るし、ゆったりとしたコートやカバーオールの下で襟を外に出して着ることも出来る。1枚袖のバーバリートレンチなんかにも抜群だろう、ファッション玄人用のスパイシーなアイテムだ。メゾンでも使用される毛足の整った最高級ムートンは、生き物を感じるかのようにワイルドにカッティングされているが、これは自分の趣味嗜好に合うようにハサミでカットしながら形を変えることが出来る。もう少しソフトにしたいなら襟を小さくカットしたり、小柄な方であれば着丈ごとイジっても良い。僕も私物はところどころハサミを入れている。ムートンの上に羽織ったワークコートは柔らかなメリノ、ハリの強いシェットランドという2つの羊毛を織り上げたカバードクロスを使用。少し離れた位置からでも、はっきりとこの2つの色を確認することが出来る。細部を見ると手仕事の箇所が多く、袖を通した時の圧倒的な高揚感は他にはない。多くを語らずとも、只者でない雰囲気が伝わるはずだろうし、これもファッション玄人を満足させられる数少ないアウターだろう。ここにデニムやスラックスでも十分なのだが、強めの赤パンを合わせると急に鮮度が上がる。今年は赤やオレンジを散々買い足したが、今、僕にとって今1番気分の上がる差し色だ。

 

 

Coat / The Crooked Tailor / 46 ( KAKINOHAHANARE )
Vest / BLACKBIRD “Ex” 23AW / 1 ( 柿乃葉 )
Knit / MAATEE&SONS “Ex” 23AW / 2 ( 柿乃葉 )
T-Shirts / MAATEE&SONS “Ex” 23SS / 2 ( 柿乃葉 )
Trouser / MAATEE&SONS / 2 ( KAKINOHAHANARE )
Shoes / Le Yucca’s “Ex” 23SS ( 私物 )
Belt / Rosaria Product. “Ex” 23SS ( 私物 )
Glasses / Frame Flance 40’s ( 私物 )
Necklace / taupe D.Motoike “Ex” 23SS ( 私物 )

 

 

 

今、1番実践しているのがグレーのワントーン。チャコールでも良いが、柔らかい印象のライトグレーでまとめるのがしっくりくる。薄く薄く、軽く軽く。アンスナムの作るニットが大好き。トラッドの代表格である、Vネックのチルデンニットを、ハイネックにするだけでは収まらず、白のラインを大胆に斜行させている。そのネジレはぐるっと背面にまで達していて、ガゼットもこの位置まで動いている。中野さんのキャラに合ったような?所謂、曲者ニットであるが、シャリ感のあるハイゲージで秋から春にかけてずっと着れるのは有り難いことだ。ジャストのテーラード下の崩しにもおすすめ。日常的に極上の無地ニットを着るからこそ、こういうニットをサラッとジャストに着こなす日がまた特別なものになる。上から羽織ったプルオーバーはNICENESSのHAMMILL。プルオーバーのアウターとなると一見堅苦しくなりそうだが、アルパカウールナイロンを強縮絨してフェルト化させたこの生地は軽くて暖かく弾力もあるし、フロントが深いので脱着も容易。トーテムポールプリントも馴染むように載せてるからうるさくないし、このゆったりシルエットでもなんだか大人っぽい。他人と被ることもないだろう。白に近くなるまで色落ちしたデニムやライトグレーのスラックス、タートルとの相性が抜群。今日はカシミヤのJEFFERYと、イナたいトレランシューズで合わせてみた。グレーのワントーンもシンプルになりすぎないように、面白みのあるレイヤードやディテールなど、ちょっとした癖が欲しいところだ。

 

 

 

Outer / NICENESS / M ( KAKINOHAHANARE )
Knit / ANSNAM / 03 ( KAKINOHAHANARE )
Cut Saw / BLACKBIRD / 1 ( 私物 / KAKINOHAHANARE )
Trouser / MAATEE&SONS “Ex” 23AW ( 私物 )
Shoes / montrail ( 私物 )
Glasses / Lunor ( 私物 )